毒親の親も毒親だった!?――世代間伝達で起こる負の連鎖と、それを断ち切る3つの方法

親に怒鳴られてショックを受ける少女。家庭内での毒親的関係性を象徴した場面。 家族・育ち・教育

「母のようにはなりたくなかったのに…」


そんな後悔の声が、SNSやカウンセリングの現場でよく聞かれるようになりました。
“毒親”という言葉は、単に厳しすぎる親を指すものではありません。そこには、世代を越えて繰り返される心の傷があるのです。

近年の研究では、親自身が幼少期に受けた「有害な児童期体験(Adverse Childhood Experiences:ACE)」が、
無自覚のうちに子どもの精神的・行動的問題として現れることが、科学的に証明されつつあります。

今回は、2つの最新論文をもとに「毒親が生まれる理由」と「連鎖を断ち切る方法」について解説します。

ろん太
ろん太

毒親自身も幼少期からストレス環境にさらされ続けてきた可能性が高いんだ!
今回、論文によってその負の連鎖を断ち切る方法を見ていこう!

【第1章】毒は受け継がれる――ACEの世代間連鎖

アイルランドの研究者Wangら(2025)は、1931組の母娘を対象とした縦断研究で、“毒親の親もまた毒親だった”という仮説を実証しました。

  • 母親にACE(虐待・ネグレクト・家庭内暴力など)の経験があると、
     娘もACEを経験する確率が3.37倍に上昇。
  • 特に感情的虐待・身体的虐待・性的虐待の影響は、高確率で再現される。

さらに、娘が出産した後、妊娠期~産後3年までの精神障害(うつ、不安障害など)のリスクが、ACEの数に比例して増加することも明らかになりました。

つまり、親の「子ども時代の傷」は、娘の“母になる過程”に影を落とすのです。

🔬 「親のトラウマは、次世代の“こころの土台”にまで影響を及ぼす」
(Wang et al., 2025)

ろん太
ろん太

毒親も子供時代に多くの傷を負っていたなんて、なんだか悲しいよね!

【第2章】心では分かってる。でも、できない——親子関係に潜む“無意識の毒”

もう一つの研究(Swords et al., 2024)は、「なぜ毒親になってしまうのか?」というメカニズムをさらに深掘りしています。

調査対象は、アイルランドで家庭支援を受ける母親314名とその子どもたち。
結果は以下のような“連鎖の構造”を示しました:

  1. 母親がACEを経験
  2. メンタルヘルスの悪化(不安・抑うつなど)
  3. 親子の関係が希薄化(愛情表現・共感力の低下)
  4. 子どもに情緒的・行動的問題(攻撃性、孤立、自己評価の低下)

特に重要なのは、ACEがなくてもメンタルの不調が親子関係を壊すという点。
逆にいえば、心のケアが親子関係を回復させ、連鎖を断ち切る第一歩になるのです。

🧠 「親子の“心の距離”が、次世代の人生にまで影響する」
(Swords et al., 2024)

ろん太
ろん太

子供時代にストレス環境で育つと、自分も毒親になってしまう確率が高くなるんだ!

【第3章】「親を責める前に、社会の責任を考える」——毒親を生む構造的背景とは

毒親は“モンスター”ではありません。
毒親の多くは、「自分がされたことしか知らない」「どうしていいか分からない」「余裕がない」――そんな構造的ストレスのなかで生きています。

研究によれば、毒親化しやすい親には以下のような共通点があります:

  • 幼少期のACE経験
  • 低所得・低学歴・若年出産
  • パートナーの不在や家庭内暴力
  • 精神疾患の未治療
  • 社会的孤立(頼れる人がいない)

Wangらの論文でも、親のACEが子どもに伝わるリスクを高める一方で、「支援の有無」「教育環境」「精神的な安定性」がその影響を軽減することが示されています。

つまり、“親自身が苦しんでいる”ことが、子どもに影を落とすのです。

ろん太
ろん太

毒親だからって責めても何も解決しないんだ!彼らも苦しんでいるんだよ!

【第4章】負の連鎖を断ち切る3つの科学的ステップ

1. 妊娠期からACEスクリーニングを導入

  • Wangらは、妊娠期と産後3年のケアが最も重要と指摘
  • 母親のACE歴を早期に把握し、必要な支援を迅速に提供

2. “親のメンタルケア”を最優先に

  • ACEに苦しむ親ほど、「育てる余裕」以前に「心の回復」が必要
  • うつ・不安・PTSDへの早期対応で、親の共感力と養育力を再構築

3. 親子関係の修復プログラムを活用

「私はあなたを見ている」「大切に思っている」――それを伝える技術を学ぶ

親が子と“感情でつながる”体験を促す支援(例:ビデオフィードバック法)

ろん太
ろん太

精神医療や地域支援センターもおすすめだよ!
親のストレスや負担を社会的サポートによって軽減させてあげる事が未来の子供たちを守っていくという事なんだね!

【まとめ】毒親は「悪」ではなく「被害者」でもある

毒親問題の本質は、「誰かが悪い」ではなく、「誰かが傷ついてきた」ことにあります。
その連鎖を断ち切るには、知識・共感・支援の3本柱が不可欠です。

「愛したいけど、うまくできない」
そんな親に必要なのは、責められることではなく、支えられることです。

ろん太
ろん太

支え合って、助け合えばストレスはうまく逃がしていけるんだ!
皆で助け合える社会を一緒に作っていこう!
読んでくれてありがとう!

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親子だって「信頼」は最初からあるものじゃない
血がつながっているから、わかり合えるなんてことはない。
それは、信頼が“与えられるもの”ではなく、“築くもの”だからかもしれません。
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参考文献

Swords, L., Kennedy, M., & Spratt, T. (2024). Pathways explaining the intergenerational effects of ACEs: The mediating roles of mothers’ mental health and the quality of their relationships with their children. Journal of Applied Developmental Psychology, 92, 101644.
DOI:10.1016/j.appdev.2024.101644

Wang, H., Zhang, Y., Ding, W., et al. (2025). Intergenerational association of ACEs and perinatal mental health in adult female offspring. The Lancet Regional Health – Western Pacific.
DOI:10.1016/j.lanwpc.2025.101579

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