「また深夜にSlackが鳴った」
「“やる気が足りない”って、どこまで頑張ればいいんだろう?」
今や“職場のストレス”は働く人なら誰もが感じる日常の一部になっています。しかし、それは本当に“個人の弱さ”が原因でしょうか?
2025年に発表された研究論文『Under Pressure: Contextualizing Workplace Stress』では、アメリカのオフィスワーカー8人への詳細なインタビューを通じて、ストレスの正体はむしろ“構造的な無関心”にあることが浮き彫りになりました。

オフィスワーカーが職場で感じるストレスの要因を研究した論文が発表されたんだ!
なぜ今、「職場ストレス」が深刻なのか?
日本でも企業が「ストレスチェック」や「メンタルヘルス研修」を導入し始めていますが、それで問題は解決しているのでしょうか?
多くのストレス対策は、“従業員自身がうまく対処すること”を前提としており、組織構造やマネジメントが与える影響には十分に向き合えていないのが現状です。
本研究は、そうした「表面的な対策」ではなく、実際に働く人たちの声を聞くことで、ストレスの根本に迫ろうとした意欲的な試みです。

ストレスは自己管理じゃなくて”組織的な対策”が必要なんじゃないかって思ったんだね!
社員8人のリアル──職場ストレスの“3つの地雷”
① 組織と上司が「無自覚に」与えるプレッシャー
「やりたくないことを“やれ”と言われるのが一番きつい」──
こう語ったのは、大学職員として働くAさん。研究者の期待、学生対応、資料づくりといった多様なタスクに加え、“空気を読んで先回りする”ことが求められる文化が、常に見えないプレッシャーとなってのしかかるといいます。
② 環境そのものがストレス源になっている
意外に見落とされがちなのが、物理的な環境要因です。
「自然光が全く入らないオフィスで、朝か夕方かも分からない」
「窓際で仕事をすると気分が全然違う」
照明や音、空調といった要素がストレスに大きく関与しているにもかかわらず、企業側がそれを“管理対象”として認識していない例も多く見られました。
③ 感情を“隠す”文化
さらに深刻なのが、ストレスを感じても「表に出せない」空気。
「疲れてますって言うと、“そんなの甘えだ”って言われる気がして…」
ストレスを抱えている自分に、逆に罪悪感を持ってしまう。こうした“自己内面化された抑圧”こそが、長期的な心身の不調につながりやすいのです。

職場の業績に個人のストレスなんて関係ないというのは僕もおかしいと思うんだ!
それでも社員は工夫していた──ストレス対処の実例
本研究では、社員たちが個々の工夫でストレスを軽減していたことも明らかになっています。
- 昼休みに5分だけ外に出て歩く
- 音楽やテレビの音を小さく流す
- 信頼できる同僚と一言だけでも会話する
- 気分のいい場所(窓際など)に一時的に移動する
こうした“ちょっとした変化”が、ストレスの高まりを防ぐ効果があることが示されています。ポイントは「万人共通の正解はない」ということ。一人ひとりのやり方に寄り添うことこそ、介入の出発点になるのです。

人それぞれストレスの解消方法は違うんだ!だからそれぞれのストレス解消方法を尊重してあげるのが良いのかもしれないね!
論文が示す“未来のストレス対策”とは?
研究者たちは、「ストレス介入には次の3つの要素が不可欠だ」と指摘しています:
- パーソナライズ化:人によって“効く対処法”は異なる。
- 環境設計の見直し:光・音・空間の“心理的設計”が求められる。
- タイミング設計:通知や介入は“文脈に合わせた空気の読める設計”が重要。
さらに、「ストレスは必ずしも悪ではない」という視点も示されています。適度なストレス(ユーストレス)は成長や集中の源にもなり得るのです。

過度なストレスは緩和しつつ、成長のきっかけになる適度なストレスは味方につけようってことだね!
結論:「社員の心」を軽くすることは、経営者の未来を守ること
社員のストレスは、単なる“メンタルの弱さ”ではありません。
組織構造、文化、物理的環境が生み出す「見えない圧力」を、会社がどれだけ“聴こうとする姿勢”を持てるかが問われています。
社員が声をあげられる職場をつくること、そしてその声に耳を傾ける仕組みを整えること。
それは「離職率を下げる」ためだけでなく、信頼される企業になるための基盤でもあるのです。

社員のストレスを考えるのは”健全に成長する企業”になるために大事な事だと思うんだ!みんなで健やかな職場環境を作っていこう!
読んでくれてありがとう!
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出典文献情報
Brun, A., Zhao, A., Singhal, M., & Bardzell, J. (2025).
Under Pressure: Contextualizing Workplace Stress Towards User-Centered Interventions.
In Proceedings of the 2025 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI ’25).
Association for Computing Machinery.
引用論文URL
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